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フィリピンパブの子を本気で好きになって、フィリピンまで追いかけた結果。

「ユウイチ」と呼ばれた夜

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第1話 静かな部屋は音が大きい

祐一、25歳。

都内の中堅メーカーで営業をしている、ごく普通の会社員だった。

特別イケメンでもない。
コミュ力が高いわけでもない。
仕事が飛び抜けてできるわけでもない。

だが、無能でもない。

遅刻もしない。
数字も悪くない。
上司に怒鳴られることもない。

けれど、褒められることもなかった。

会議で意見を言っても、

「まあ、それもありだね」

で終わる。

同期たちは二種類に分かれていた。

出世していくやつ。
辞めて転職していくやつ。

祐一は、そのどちらでもない。

ただ“残っている側”の人間だった。

夜9時半。

駅から12分歩いた先のワンルーム。

ドアを開けると、部屋の空気は止まっている。

テレビをつける。

意味はない。

音が欲しいだけだ。

コンビニ弁当を電子レンジに入れる。

「チン」という音が、やけに大きい。

静かな部屋は、小さな音を増幅する。

冷蔵庫の低い振動。
エアコンの風。
箸を割る音。

スマホを見る。

通知はグループLINEだけ。

自分宛のメッセージはない。

誰も待っていない。

祐一は、自分が孤独だとは思っていなかった。

だが、どこか乾いていた。

恋人が欲しいわけじゃない。

結婚願望も強くない。

ただ――

「祐一が来てくれて嬉しい」

その言葉を、どこかで求めていた。


第2話 名前を呼ばれた夜

その夜、会社の先輩に誘われた。

「一回くらい行っとけよ。面白いから」

連れて行かれたのは、駅前の雑居ビル4階にあるフィリピンパブだった。

エレベーターを降りると、ドアの横には小さなフィリピン国旗のステッカー。

中から英語のポップスが聞こえる。

祐一は少し緊張していた。

「緊張してんの?」

先輩が笑う。

祐一は苦笑いした。

本当は少し帰りたかった。

自分みたいな男が来る場所じゃない気がした。

ドアが開く。

紫の照明。
甘い香水。
サンミゲルの瓶。
タガログ語の笑い声。

空気が違う。

明るいのに、どこか夜の匂いがした。

女の子たちが近づいてくる。

距離が近い。

笑顔が大きい。

その中で、一人の女が隣に座った。

黒い長い髪。
少し丸い目。
笑うと頬が柔らかく上がる。

「ハロー。なまえ、なに?」

少しだけ訛りのある日本語。

祐一は一瞬、名前を言うのをためらった。

だが口が動く。

「……祐一」

すると彼女は笑った。

「ユウイチ!」

その発音は少し丸い。

でも、その音が胸に刺さった。

自分の名前を、こんなふうに呼ばれたことがなかった。

軽くて、柔らかい。

まるで別人の名前みたいだった。

「仕事なに?」

「営業…です」

「すごいね!」

その“すごい”に、祐一は戸惑った。

会社では言われない言葉だった。

リサは話を遮らない。

ちゃんと目を見て頷く。

「ユウイチ、まじめだね」

何度も言われてきた言葉。

でも今日は違う。

否定ではなく、肯定に聞こえた。

祐一は思う。

“俺の話、ちゃんと聞いてる”

それだけで胸が温かくなった。

帰り際。

リサが手を振る。

「またね、ユウイチ」

エレベーターの鏡に映る自分の顔が、少し柔らかかった。

その夜、祐一は久しぶりに少し深く眠れた。


第3話 「待ってた」と言われた夜

次に行ったのは、一週間後だった。

先輩はいない。

祐一ひとりで、あの雑居ビルの前に立っていた。

理由は作れる。

ストレス発散。
仕事帰り。
なんとなく。

でも本当は違う。

あの声を、もう一度聞きたかった。

ドアを開ける。

するとすぐに声が飛ぶ。

「ユウイチ!!」

リサだった。

本当に嬉しそうに笑っている。

「来ると思ってた!」

その瞬間、祐一の胸が熱くなる。

“待ってた?”

席につく。

リサは前より距離が近かった。

「今日つかれた?」

「ちゃんとご飯たべた?」

そんな言葉が自然に出てくる。

しかも、営業っぽくない。

祐一は勘違いを始める。

“俺は、その他大勢じゃない”

店内ではタガログ語が飛び交っている。

「サラマット!」
「クヤ!」

リサは笑いながら説明する。

「フィリピンはね、家族すごい大事」

その言葉を聞いて、祐一は彼女の“背景”を知った気になる。

それが嬉しかった。

帰り際。

リサが小さく聞いた。

「ユウイチ、LINEある?」

その瞬間、時間が止まる。

店の中だけじゃない。

外でも繋がれる。

祐一はスマホを取り出した。


第4話 LINEが止まらなくなる

それから、LINEの頻度が増えた。

朝。

「グッドモーニング ☀️」

昼。

「ちゃんとご飯たべた?」

夜。

「今日つかれた」

通知が鳴るたびに、胸が温かくなる。

仕事中でもスマホを確認してしまう。

返信が遅いと不安になる。

既読がつくと安心する。

夜、ビデオ通話が来る。

画面の向こうには、フィリピンの実家。

扇風機。
十字架。
プラスチックの椅子。

「ママに挨拶して」

リサの母親が笑う。

「サラマット、ユウイチ」

祐一の胸が強く鳴る。

“俺、家族の中に入ってる?”

彼は気づかない。

会いに行く側だったはずが、

“返信を待つ側”に変わっていることに。


第5話 嫉妬

金曜日。

店は混んでいた。

リサは別のテーブルについている。

年上の男。

高そうな時計。

シャンパン。

リサは笑っていた。

これまで見たことがないくらい楽しそうに。

肩に触れる。
耳元で話す。

祐一の胸がざわつく。

“営業だ”

そう思おうとする。

でも苦しい。

自分と同じ距離で笑っている。

いや、自分以上かもしれない。

その瞬間。

祐一は初めて嫉妬を知る。

“俺は特別じゃないのか?”

その不安が、依存の始まりだった。

バナバティーは、毎日の糖質管理を意識する方の健康習慣をサポートするお茶です。

1. 食後血糖のサポート
2. 糖質管理を意識する人の健康習慣向き
3. 生活習慣を整えたい人向けの健康茶

第6話 外で会う約束

金曜日の夜。

店は混んでいた。

紫の照明。
サンミゲルの瓶。
タガログ語の笑い声。

リサは別のテーブルについている。

年上の男。
高そうな時計。
シャンパン。

リサは笑っていた。

自分に向ける笑顔と、同じ笑顔。

肩に触れる。
耳元で話す。
男が笑う。

祐一の胸がざわつく。

“営業だ”

そう思おうとする。

でも苦しい。

リサがこちらに気づく。

一瞬だけ目が合う。

だが、すぐに男のほうへ戻る。

その瞬間。

祐一は初めて感じる。

“俺の代わりはいる”

席に戻ってきたリサは笑う。

「ごめんね、忙しかった」

その言葉に安心する自分がいる。

そして帰り際。

リサが小さく言う。

「今度、外で会う?」

時間が止まる。

店の外。

それは、客と店の境界線の外側だった。


第7話 焼肉屋

待ち合わせは駅前だった。

ヒールを履いていないリサは、店で見るより小さく見えた。

白いワンピース。
軽く結んだ髪。

その姿だけで、特別に感じる。

二人は焼肉屋へ入る。

煙の向こうで、リサが笑う。

「日本の焼肉すき。フィリピン高いから」

肉を焼きながら、自然に祐一の皿へ乗せる。

「ユウイチ、ちゃんと食べて」

その言葉が妙に嬉しい。

店の中ではなく、
普通の街で、普通に食事をしている。

それだけなのに、祐一の胸は満たされていた。

リサは笑いながらタガログ語を教える。

「“サラマット”は、ありがとう」

「“マサラップ”は、おいしい」

祐一が発音を間違えると、リサは声を出して笑う。

その笑顔を見ながら思う。

“俺だけが知ってる顔だ”


第8話 LINEが止まらなくなる

外で会ってから、LINEの頻度が一気に増えた。

朝。

「おはよう、ユウイチ ☀️」

昼。

「ちゃんとご飯たべた?」

夜。

「今日つかれた」

通知が鳴るたびに、胸が温かくなる。

仕事中でもスマホを見る。

返信が遅いと不安になる。

既読がつくと安心する。

夜、突然ビデオ通話が来る。

画面の向こうにはフィリピンの実家。

扇風機。
十字架。
テレビの音。

「ママに挨拶して」

リサの母親が笑う。

「サラマット、ユウイチ」

その瞬間。

祐一は思う。

“俺、家族の中に入ってる?”

気づけば、彼の一日は

リサの通知で始まり、
リサの「おやすみ」で終わるようになっていた。


第9話 境界線

焼肉屋の帰り道。

夜風が少し冷たい。

歩く距離が近い。

肩が触れる。

離れない。

リサが小さく笑う。

「ユウイチ、シャイだね」

祐一はうまく返せない。

胸だけが強く鳴っている。

ホテルの前で立ち止まる。

一瞬だけ、疑問が浮かぶ。

“これは営業か?”

だが、すぐに消える。

今日は店じゃない。

これは“俺を選んだ時間”だ。

部屋へ入る。

静かな空間。

リサが小さく言う。

「ユウイチ、トラストしてる」

その言葉で、迷いが消える。

そして二人は、一線を越える。

激しさではなく、静かな時間だった。

耳元で聞こえる。

「ユウイチ」

少しタガログ訛りのある発音。

その瞬間。

祐一の中で何かが固定される。

“俺は客じゃない”

その思い込みが、深く根を張る。


第10話 最初のお願い

一線を越えた後、距離はさらに近くなった。

店でも、LINEでも、リサは前より甘えるようになる。

「ユウイチだけ、安心する」

その言葉に、祐一は完全に心を許していた。

ある夜。

リサが少し疲れた顔をしている。

「どうしたの?」

「弟ね、大学行きたい。でもフィリピン、学費高い」

笑いながら言う。

重くならないように。

頼んでいるわけじゃない。

でも、困っているのは伝わる。

「フィリピンはね、日本で働く人が家族助けるの普通」

祐一の胸が反応する。

“俺は外の人間じゃない”

だから自然に聞く。

「足りないの?」

リサはすぐ否定する。

「だいじょうぶ。でも、ちょっとだけ大変」

その“ちょっと”が危なかった。

頼まれていない。

だからこそ、祐一は自分から言ってしまう。

「少しくらいなら…出せるよ」

言った瞬間、自分でも驚く。

リサは少し黙る。

そして小さく言う。

「ほんとに少しだけなら…うれしい」

金額は1万円。

ATMへ向かう祐一の足は、思ったより軽かった。

これはお金じゃない。

“必要とされている証明”

そんな感覚が、胸を満たしていた。

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第11話 仕送り

最初は、本当に小さな金額だった。

1万円。

祐一の中では、“貸した”という感覚ではない。

助けた。

支えた。

そんな感覚だった。

リサは何度も頭を下げた。

「サラマット、ユウイチ」

その言葉を聞くたびに、胸が温かくなる。

数日後。

LINEで動画が送られてくる。

フィリピンの実家だった。

白い壁。
回り続ける扇風機。
プラスチックのテーブル。

リサの母親が笑っている。

その横で、若い男が手を振る。

「サラマット、クヤ!」

クヤ。

フィリピンで“兄さん”という意味。

その瞬間。

祐一の胸が強く鳴る。

“俺はもう外の人間じゃない”

そう思った。

それから、リサはよく家族の話をするようになった。

「フィリピンはね、日本と違う。家族みんなで助ける」

「お姉ちゃんが働いたら、弟の学校助けるの普通」

「ママ、いつも祈ってる」

画面の向こうには、壁に飾られた十字架。

祐一は、その文化を“美しい”と思った。

日本みたいに冷たくない。

家族同士が近い。

助け合う。

そう感じた。

だからこそ、自分もその輪の中に入りたいと思った。

次のお願いは自然だった。

「弟の学費、今月ちょっと足りない」

重く言わない。

笑いながら言う。

“助けて”ではなく、
“ちょっと困ってる”くらい。

だから祐一は、自分から聞いてしまう。

「いくら必要なの?」

「ほんと少しだけ」

その“少し”が危なかった。

気づけば、2万円。
5万円。

金額はゆっくり上がっていく。

だが祐一は、不思議と嫌じゃなかった。

むしろ、

“必要とされている”

その感覚が心地よかった。


第12話 10万円

ある夜。

店へ行くと、リサは少し元気がなかった。

紫の照明の下でも分かる。

笑顔が薄い。

「どうしたの?」

リサは苦笑いする。

「アパートの更新、高かった」

軽く言う。

重くならないように。

それが逆にリアルだった。

「フィリピンの家にも送金したし、今月ちょっと大変」

祐一の胸がざわつく。

“俺が助けないと”

その感情が先に動く。

だが同時に、頭の中には別の男が浮かぶ。

シャンパンを入れていた男。

高そうな時計。

笑っていたリサ。

“あいつには負けたくない”

そんな感情が混ざり始めていた。

「いくらくらい足りないの?」

リサはすぐに答えない。

少し黙ってから、小さく言う。

「…10万くらい。でも無理しないで」

10万。

これまでとは違う金額。

頭の奥で警報が鳴る。

“やめとけ”

でも、その声より強い感情がある。

“ここで引いたら、その他大勢になる”

祐一はATMへ向かう。

夜のコンビニ。

蛍光灯。

カードを入れる。

暗証番号を押す。

10万円。

紙幣が出てくる音が、妙に重い。

封筒を渡すと、リサは抱きついた。

「ユウイチ、ほんとやさしい…」

その瞬間。

不安が消える。

また“特別”に戻れた気がした。

だから、危険だと分かっていても止まれなかった。


第13話 借金

給料日。

祐一は銀行アプリを見る。

数字が減っている。

思っていた以上に。

家賃。
カード支払い。
店。

残る金額が少ない。

それでも、夜になるとリサに会いに行く。

「ユウイチ来た!」

その一言で、不安が消える。

店では前より高いボトルを入れるようになっていた。

リサが嬉しそうに笑う。

その笑顔を見ると、

“間違ってない”

と思ってしまう。

カードの支払いは分割に変わる。

リボ払い。

最初は怖かった。

だが、一度使うと感覚が鈍る。

“来月なんとかすればいい”

その考えが危険だった。

ある日。

ATMで残高を見た祐一は、初めて少し青ざめる。

足りない。

でもその夜も、リサからLINEが来る。

「今日会いたい」

その一言で、全部が揺らぐ。

翌日。

祐一は消費者金融へ入っていた。

無機質な店内。

番号札。

説明を聞く。

契約書に名前を書く。

“自分は違うと思ってた”

そう思いながら、サインしていた。

借金が増える。

だが同時に、安心もする。

“これで、また会える”

もう感覚が壊れ始めていた。


第14話 限界

ある金曜日。

店は混んでいた。

リサは別のテーブルで笑っている。

祐一は落ち着かない。

“俺は特別”

そう思いたい。

だからボトルを入れる。

カードを出す。

店員が機械に通す。

止まる。

もう一度。

止まる。

耳が熱くなる。

空気が重い。

「別のカードありますか?」

笑顔の店員。

でも祐一には、その笑顔が刺さる。

別のカードを出す。

それも通らない。

その瞬間。

自分の“限界”を見せられた気がした。

リサは笑顔を崩さない。

だが、ほんの少しだけ距離がある。

「だいじょうぶ?」

その言葉が苦しい。

“だいじょうぶじゃない”

でも言えない。

店を出たあと、祐一はコンビニの前で立ち尽くす。

スマホには借金の通知。

返済日。

遅延。

現実が追いついてくる。

だが翌日、祐一はまた金を借りていた。

“ここで終わったら、全部なくなる”

そう思ってしまった。


第15話 フィリピン帰国

ある夜。

リサからLINEが来る。

「ユウイチ、ちょっと話ある」

その一文だけで胸がざわつく。

店へ向かう。

リサはいつもより静かだった。

「ママの体調、よくない」

目を伏せながら言う。

「フィリピン帰るかも」

頭が真っ白になる。

“帰る?”

遠い国。

動画で見た家。

扇風機。

十字架。

リサの母親。

全部が頭に浮かぶ。

「いつ?」

声が少し震える。

「まだ分からない。でも早いかも」

祐一の胸に、強い焦りが生まれる。

離れたら終わる。

もう会えなくなる。

その恐怖が、金に変わる。

「いくら必要?」

自分でも驚くほど早く言葉が出る。

リサは小さく首を振る。

「そんな…悪いよ」

だが、その“遠慮”が逆に祐一を止められなくする。

20万。

30万。

祐一は、自分でも分からないまま金を出していた。

“これで繋がれるなら”

そんな感情が混ざっていた。

帰り際。

リサが抱きつく。

「ユウイチ、ほんとにサラマット」

その言葉を聞きながら、祐一は思う。

“俺は必要とされている”

だが実際は、

その瞬間から、

静かに切り離され始めていた。

特に成分としてよく注目されるのがコロソリン酸です。人での小規模研究やレビューでは、血糖値を下げる可能性が示されています
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第16話 マニラ

リサがフィリピンへ帰ってから、祐一の生活は崩れ始めた。

LINEは来る。

だが、前とは違う。

返信が遅い。

短い。

「今、家族といる」
「あとでLINEするね」
「ちょっと忙しい」

以前みたいに、

「おはよう」
「今日つかれた」
「会いたい」

そんな言葉は減っていった。

それでも祐一は、スマホを握り続ける。

既読がつくたびに安心する。

返信が来ないたびに不安になる。

夜中、何度も画面を確認する。

“今、誰といる?”

そんな考えが頭から離れない。

ある日、祐一は会社でミスをした。

上司に注意される。

だが内容が頭に入らない。

頭の中には、リサしかいなかった。

仕事終わり。

祐一は駅前で立ち止まる。

無意識に、あのフィリピンパブへ向かいそうになる。

だが、もうリサはいない。

店の前を通る。

紫の照明。
タガログ語。
サンミゲル。

全部同じなのに、空っぽに見える。

その夜。

祐一はスマホで航空券を検索していた。

マニラ。

その文字を見るだけで、胸が強く鳴る。

“会いに行けば、全部戻るかもしれない”

そんな希望が、まだ消えていなかった。

残高を見る。

借金は増えている。

カードの支払いも限界だった。

それでも、予約ボタンを押していた。

もう理性では止まれなかった。


第17話 再会

マニラの空港を出た瞬間、熱気が体にまとわりつく。

夜なのに暑い。

道路にはジープニー。
バイク。
クラクション。

空気が騒がしい。

日本とは違う。

祐一はスマホを握る。

「今マニラ」

既読。

数分後、返信。

「ほんとに来たの?」

その一文だけで、胸が軽くなる。

“まだ嫌われてない”

そう思いたかった。

待ち合わせ場所へ向かう。

リサが立っている。

白いTシャツ。
短パン。
ヒールを履いていない。

日本で見ていた姿と違う。

でも、笑っている。

「ユウイチ、ほんとに来たんだ」

その笑顔だけで、祐一は救われる。

抱きしめたくなる。

だが、少し距離を感じる。

以前より、どこか他人行儀だった。

それでも祐一は、自分に言い聞かせる。

“久しぶりだからだ”


第18話 家族

リサの家は、住宅街の奥にあった。

細い道。

コンクリートの壁。

窓からテレビの光が漏れている。

中へ入る。

小さな扇風機が回っている。

壁には十字架。

聖母マリアの絵。

プラスチックの椅子。

フィリピンで何度も動画越しに見た光景だった。

“本当に来たんだ”

祐一は少し感動していた。

奥から男が出てくる。

リサが笑う。

「弟」

日本で見せていた写真の男。

祐一は安心する。

男は軽く笑う。

「ハロー」

英語とタガログ語が混ざる。

三人で夕飯を食べる。

アドボ。
白いご飯。
甘いジュース。

リサは楽しそうだった。

男も自然に笑っている。

祐一は思う。

“俺、家族の中にいる”

その感覚が嬉しかった。

日本では感じたことのない温かさだった。


第19話 違和感

夜になる。

扇風機の音だけが部屋に響く。

蒸し暑い。

祐一は眠れない。

隣の部屋から、リサと男の笑い声が聞こえる。

タガログ語だから内容は分からない。

でも、距離が近い。

仲が良すぎる。

“兄弟だからか”

そう思おうとする。

だが、胸の奥がざわつく。

夜中。

喉が渇き、部屋を出る。

その時。

外から車の音が聞こえる。

窓の外を見る。

家の前に車が止まっている。

街灯は暗い。

その中に、二つの影。

リサだった。

そして、弟だと言った男。

二人は笑っている。

昼間とは違う空気。

近い。

近すぎる。

男がリサの髪に触れる。

リサが笑う。

そして、

抱き合う。

祐一の呼吸が止まる。

頭が真っ白になる。

その距離は、

兄弟の距離ではなかった。


第20話 That’s her husband.

祐一は窓の影から動けない。

外では二人が笑っている。

まるで、恋人同士のように。

いや、

恋人そのものだった。

頭の中で、今までの言葉が崩れていく。

弟。
大学。
学費。
仕送り。

全部、違う意味になる。

その時。

近くを通った男が、小さく声をかける。

「Hey… you know that girl?」

祐一は反射的に振り向く。

男は車を見ながら言う。

「That’s her husband.」

一瞬、意味が理解できない。

男は続ける。

「Lisa… she’s married.」

世界が静かになる。

祐一は立ったまま動けない。

胸の奥が、ゆっくり崩れていく。

車の中で、二人は笑っている。

まるで、何事もなかったかのように。

その瞬間。

祐一の中で、何かが完全に壊れた。


最終話 静かな部屋

日本へ戻る。

いつものワンルーム。

ドアを開ける。

止まった空気。

テレビをつける。

電子レンジを回す。

「チン」という音が、やけに大きい。

全部、最初と同じだった。

違うのは、

借金だけ。

机の上には、返済通知。

スマホは静かだ。

もう、

「おはよう、ユウイチ」

も来ない。

「サラマット」

も来ない。

あの柔らかい発音で、

自分の名前を呼ぶ声は、もうどこにもない。

祐一は静かな部屋で思う。

自分は恋をしていたんじゃない。

ただ、

“居場所”を買っていただけだった。

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